水・土壌・そして寒暖の差

私の圃場からは目の前に関西百名山に数えられている
額井岳(ぬかいだけ)812.3メートルが見えます。
5月の連休には頂上から富士山が見えたとTVで放映されました。
ダイヤモンド富士になる、まれな時間に撮影に成功したのでした。

この山からは伏流水として美しい水が流れて来ます。
細い急なせせらぎを流れて来る水は
山の麓で簡易水道の水槽に貯められ飲料水となり、
あふれた水はそのまま田にも入ります。
生活排水の入らない水は清流のまま稲の根元を潤します。

 圃場は砂地です。
掛け流しのように水が入れ替わるのでよどんだ水にならず、
酸素を根っこに届けます。

 稲が育つにはいくつか大事な要素がありますが、
何よりも水・土壌・そして寒暖の差が必要です。
異常気象ではないのかと言われ始めたように
温帯気候と言われてきた日本列島も、
今や亜熱帯になったのではないかと感じてしまいます。
稲作にはこの高温が一番の天敵になってしまいました。
寒暖の差は、昼に光合成で栄養を蓄え疲れた稲を
涼しい夜に休ませます。
温度の高い水や土壌では、蓄えた養分を夜に消費してしまいます。

我が家にはエアコンはなく、寝苦しい熱帯夜もありません。
一昔前まではこの地域では天然の高野豆腐を作って
地場産業になっていました。
山の麓では氷室の跡が出ました。
小川には蛍が乱舞しています。
そして秋にはたわわに天の恵みの下で育った米
「天空のほほえみ」が生まれます。

有機質をふんだんに使った肥料には、
稲わら・もみがら・発酵堆肥・刈り取った草、
それらを完全に分解するために稲に適した
乳酸菌(ラクトバチルス)を土中に撒いて、
土を作ることから始めました。
土中の様々な微量要素と合体させ、
「土ごと発酵栽培」を土台にしています。
4年掛かって土壌・水・気温が稲の育ちに適応できる
育て方に辿り着きました。
兵庫県は丹波篠山(たんばささやま)から
ラクトバチルスとカルシウム(カルテック)を使った
米作りの先生が遠路はるばる足繁く通ってくれます。
個人戦の米づくりではなくて、団体戦に育ちつつあります。